■スラム街の子どもが誰からも教わったことがなかったある動作
約100年前のイタリアで、マリア・モンテッソーリはスラム街の子どもたちを集めて、《あること》をしてみせました。すると、子どもたちはそれを真似することが大好きになり、その動作をするだけで自分のことを誇らしく思えるようになったといいます。
モンテッソーリがやってみせたこと。それは「鼻をかむ」という動作でした。
スラム街の子どもたちは、それまでほとんど躾らしいこともしてもらえないまま、外で働かされたり放っておかれていました。その子たちにモンテッソーリは「身の回りのお世話を自分でする」という人間として当然の行動を、真似できるようにゆっくりとやってみせたのです。
これはモンテッソーリ乳児教育において最も重要視されている、「日常生活の練習」と呼ばれる活動の原点とも言えるプレゼンテーションだったのではないでしょうか。
1,2歳のお子さんには、写真のようにティッシュを数枚取りやすいように折りたたみ、トレーに載せておくという用意ができます。鼻の片側で1枚、もう片側でもう1枚を使い、ゆっくりと鼻をワイプする動作を大人がしてみせてあげてください。
■自分のことを自分でケアできる幸せと誇り〜本物の早期教育って?〜
モンテッソーリ園のインファントコミュニティー(1,2歳児クラス)では、子ども専用の身だしなみコーナーが設けられています。
子どもサイズのテーブルと椅子、鏡、ティッシュを入れるかご(トレー)、ごみばこ、小さなヘアブラシなどを置けば、立派な身だしなみコーナーの完成です。ヘアブラシはNIDOと呼ばれる0歳児クラスにも置かれていて、髪にブラシを当てる赤ちゃんのかわいらしい姿が見られます(お友達の髪をとかしてあげようとしていた子もいて本当にかわいかったです)。
自分の身の回りのことを自分でする、この経験は歩き始めた辺りから教えて行くことができます。大人が「できるわけない」という思い込みを捨てるところから始まるのではないでしょうか。
この経験の積み重ねにより子どもは、人間として尊重された存在であること、自分で自分の環境に影響を与えていけるという自己肯定感、そして何よりシンプルに「気もちいいなあ」という日常を生きることへの爽快感を味わうことにつながっていきます。
「早期教育」という言葉はお受験や習い事のイメージにつながりやすいものですが、心と脳の発達に最適なのはこのような「日常生活の練習」を当たり前のこととして重ねていくことなのです。
■実録:モンテッソーリ園「ふ〜気もちいいなあ!自分でできた!」
最後に、実際のインファントコミュニティーの様子です。
2歳の男の子が身だしなみコーナーで鼻をかんでいます。鼻をかむタイミングは、先生に促されることもありますが、自分でやりたいと思ったときです。

ふ〜、おわった。鏡でちゃんとチェックしようっと。

いいね!自分でできたよ♪
誇らしげなお顔がなんとも頼もしいではないですか。
ご家庭でもぜひ取り入れてみてくださいね。